「真面目にコツコツ、休まず働く」ヒット商品の裏側には地道な努力あり

「最初は『気持ち悪い』『これ本当に食べられるの?』って言われましたよ。」

現社長で大角玉屋三代目の大角和平さんは、「いちご豆大福」を開発した当時のことを、そう笑顔で振り返ります。しかし、そんな見た目の印象とは裏腹に、モニターとして「いちご豆大福」を食べた職員たちは口々に美味しいと驚きの顔をしたのだとか。売れるという自信は全く無いまま初回30個限定で販売したところ、瞬く間に全国的な話題になったと言います。

良いものを作ろうという自分達の努力だけではなく、時代背景や立地など、様々な条件がピタリとあったからこそのヒットだったのではないかと、大角さんは考えているそうです。

取材当日、本店とその地下にある菓子製造工場を忙しく往復しながらも、店舗を訪れるお客様に対し「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と挨拶を欠かさない大角さん。大角さんは、本店のある「あけぼのばし通り商店街」の会長もされています。

たくさんの人に愛され、地域を元気にする和菓子屋「大角玉屋」。今回のいちごスイーツ現地レポートでは、そんな大角玉屋の元祖「いちご豆大福」をレポートしたいと思います。

 

イチゴショートケーキの和菓子版!?開発秘話について伺いました。

昭和60年の年始、新聞のとある年頭予想に、「何かのきっかけがあれば、和菓子に再び着目される時代が来るだろう」という内容のコラムが掲載されました。

当時、どこの駅前にもケーキ屋さんが一軒はあったという程、洋菓子は人々の生活に根付いていましたが、一方で、ある意味飽和状態でもあったのでしょう。時代が新しいスイーツを求めていたのかもしれないと大角さんは振り返ります。一方で和菓子業界は全体的に元気がなく、常に何か売れるものはないかと試行錯誤の日々。「いちご豆大福」もそんな試行錯誤によって生まれた試作品の一つだったと言います。

それまで、和菓子に生のものを入れるという感覚はなく、和菓子に合わせるのは、甘露煮など加熱したものでした。

しかし、イチゴショートケーキのように、シンプルで美味しく、可愛らしく、そしていつまでも衰えない和菓子を作りたいと考えた大角さんは、どうしても生のいちごにこだわりたかったと言います。それは、生のイチゴの持つ独特の香りや酸味がとてもインパクトがあり、それまでの和菓子とは全く異なる商品ができると直感したからだったと言います。

生のいちごを使うなら、団子やまんじゅうなど調理過程で加熱するお菓子ではなく、鮮度が大切な大福との相性が良いのではないかと、いちごと大福の組み合わせを考え付いたのだとか。大福と合わせるのに最適ないちごは何だろうと、様々な品種のいちごを使ってみたり、餡子や餅の味や固さを調整したりと、試作を重ねて完成したのが現在の「いちご豆大福」。今では、多い時は一日3000個も売れる程の人気商品となりました。

「いちご豆大福」が発売された当時、大角玉屋のある「あけぼのばし通り」は「フジテレビ通り」と呼ばれていました。そう、現在の場所に移転する前まで、フジテレビの本社はこの通りの先にあったのです。

その立地のおかげで、新しいものや珍しいものを常に探しているメディア関係者に「いちご豆大福」の評判がすぐに伝わりました。舌の肥えたメディア関係者も納得する味を作り上げた大角玉屋の「いちご豆大福」の評判が全国的に取り上げられるまで、そう時間はかかりませんでした。

 

お待ちかねの試食タイム!まさかイチゴが引き立て役に回るとは!?

それではお待ちかねの試食タイムです。まずはパッケージを丁寧に開けます。
裏面の原材料名を見ると、とてもシンプルだと気づきます。保存料などは一切無添加なのですね。

手に持つと餡子の感触がダイレクトに伝わってきます。柔らかですが、しっかりしています。
次に、萌え断を求めて真ん中で二つにカットしてみました。柔らかい餅を慎重にカットすると、いちごの爽やかな香りがふわっと広がり、大角さんが生のいちごにこだわった理由が実感できました。カットした断面も、餅の白色、餡子の小豆色、そしていちごの鮮やかな赤色のコントラストが美しく、視覚も嗅覚も刺激され、期待が膨らみます。

そしていよいよ一口。いちごの甘酸っぱいフレッシュな果汁がジュワーっと口の中に広がります。
いちごの種のツブツブした食感が、餅と餡子によってまろやかに感じられる一方で、いちごのジューシーさはとても直接的に感じられます。そんないちごの独特の風味はとても瞬間的。すぐにすっきりと消えていき、後には餅と餡子の奥深い味わいが残ります。「餡子=甘さ」という概念を覆す程の小豆の香りと風味。そして餅のしっかりとしたコシ。米本来の控えめな甘みとほのかな塩味。
いちごというパンチの効いた素材を先に味わった事によって、味覚や嗅覚が研ぎ澄まされ、餅や餡子本来の繊細な風味も存分に感じる事が出来るのかもしれません。

まさに計算されつくした美味しさとはこのことでしょう。

 

朝生菓子という贅沢。「いちご豆大福」ができるまで

「いちご豆大福」には、保存料は完全無添加。原材料は、「もち米、砂糖、小豆、いちご、赤えんどう豆、塩」のみです。
その日の朝作る和菓子のことを「朝生菓子」と言いますが、「いちご豆大福」もそんな朝生菓子の一つ。作りたてを味わうという贅沢の裏には、いったいどんな工程が隠されているのでしょうか。

午前6時前、その日市場で一番状態の良いものを仕入れるところから「いちご豆大福」作りは始まります。いちごは時期や産地によって、状態も味も様々。「いちご豆大福」に使ういちごの品種は、程よい酸味が特徴の「とちおとめ」と決まっているものの、産地や生産者などは、毎朝、状態を良く見て確認した上で決めているのだそう。いちごのベストシーズンである11月から4月までの間は、あまおうを使った「銀座特選いちご豆大福」も銀座店で販売されています。

一度、「一番美味しいイチゴ」と言われている「あきひめ」を使って「いちご豆大福」を作ってみた時には、「あきひめ」独特の強い甘さが、大福と合わせると「甘×甘」になってしまい、全体のバランスが良くなかったのだとか。美味しいものを集めて組み合わせれば良いものができるのではなく、甘み、酸味、香り、渋さ、食感など、味を構成する様々な要素のバランスが重要だと大角さんは考えています。

常に安定した味を出すというのが、和菓子屋の腕の見せ所だと言います。いちごに限らず、もち米や小豆などの原材料は、どれも産地やその年の天候などによってコンディションが大きく異なります。

毎日同じように安定した状態のものが手に入るという事は絶対にありえないシビアな環境で、できるだけ同じ味を作り続けていくというのは並大抵の努力では叶えられない事でしょう。代々受け継いでいるレシピはあるものの、コシの出し方や水分量などの細かい調整は、日々、自分の目や手、舌を使って確かめながら行っているのだそう。

大角さんのモットーは、「真面目にコツコツ、休まず働く」。
そう語る大角さんの笑顔からは、どんな難しい事もチャレンジ精神で乗り越えてきた強さを感じました。

 

大角玉屋「いちご豆大福」を食べてみたいと思った方は…

大正元年創業の大角玉屋さんは、元旦以外は年中無休です。営業時間は店舗によって異なりますので、ご注意下さい。

なお、今回のレポートで取り上げた「いちご豆大福」は、売り切れ次第終了となります。当日事前に電話で予約も可能という事ですので、心配な方は早めに電話で予約しておくと安心ですね。常連のお客さんの情報によると、「いちご豆大福」が一番美味しい時期は、寒の頃、2月くらいだとか。
一年を通して味を食べ比べてみるのも、また楽しいかもしれません。

株式会社 大角玉屋 本店
店舗住所 東京都新宿区住吉町8-25
店舗電話 03-3351-7735
営業時間 9時~19時30分

銀座店
店舗住所 東京都中央区銀座西3-1
店舗電話 03-3563-1535
営業時間 10時~20時

四谷店
店舗住所 東京都新宿区四谷3-6
店舗電話 03-3358-8612
営業時間 9時~19時30分

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