魅惑的ないちご酒「大人の果肉の沼」を開発した梅乃宿インタビュー!

このたび、日本酒蔵の老舗である梅乃宿の5代目で代表の吉田佳代氏とマーケティング部長の古澤 幸彦氏にインタビューさせて頂きました。

そのきっかけはフェイスブックで表示されてくる魅惑的ないちごのお酒「大人の果肉の沼」でした。いつも美味しそうなビジュアルで出てくるし、常々魅力的だなと思って周りに話していたら、いちご大学のサポーターでもある社会保険労務士の原 麻衣子先生から「代表の吉田さんは学友ですからご紹介しますよ」とあれよあれよとご縁がつながった次第です。

どうして沼が出来たのか、その経緯やコンセプトなどをじっくりとお話頂きました。それではご覧ください。

果実リキュールに力を入れることになったきっかけを教えてください。

弊社は元々、日本酒だけを作っていました。日本酒は冬に作るのですが、その日本酒は、専業農家で冬の間、出稼ぎで半年間、住み込みで来られた人が作ってくれていました。

ただ、年々、来てくれる人の年齢も上がってきていました。「若い人を連れてきてください」とお願いをしても、「今どき、若い専業農家がいないんだよ」と言われてしまいます。

それを、仕方ないと放っておけば、技術の伝承ができません。そのため、「地元で若い人を採用しないといけないね」ということになりました。でも、地元で採用するにしても、「冬だけ来てくれればいい」という形では働きにくいため、年間雇用せざるを得なかったというのが実情です。それが今から30年くらい前のことになります。

そうすると、冬は、出稼ぎに来てくれる技術を持った人たちと若い地元の人たちが日本酒を一緒に作るので技術の伝承も進みます。ただ、問題は夏ですね。夏は人が余ってしまうので何かないかなと考えた時、梅の実は5、6、7月がシーズンなので梅酒作りにはちょうどいいと。

そこで、弊社は梅乃宿酒造という名前だったこともあり、イメージも近くていいよねということで梅酒を作ることになりました。梅酒は通常、焼酎やホワイトリカーで漬けますが、同じことをしても面白くないよね、それなら、自分たちで作っている日本酒を使って、日本酒仕込みの梅酒を作ろうということでスタートしました。

作ったものを販売したところ、日本酒由来のまろやかな口当たりが反響を呼び、1年目はあっという間に売れ、2年目も売れたため、3年目に先代がドカンと梅を仕入れて作る決断をしました。ちょうど、そのタイミングで梅酒のブームがやってきたという感じです。

梅酒がすごく売れて喜んでいたところに、また問題が起こりました。梅酒に漬けた後の梅の実が大量に残ってしまうのです。食べようと思ったら食べられますが、梅酒に漬けた梅の実は売れないですよね。でも、毎年、何十トンという廃棄物が出てしまうので、それをどうしていたかというと、お金を出して産業廃棄物で捨てざるを得ませんでした。

やはり、食べようと思ったら食べられるものを捨ててしまうのは非常に心苦しく、なんとかできないかなと考えていました。他社の梅酒で梅の実が丸々入っているものがありますが、同じことを真似しても面白くありません。

梅の実が丸々入っていると、種もあるし、それを出さないといけない、それならいっそのこと、種を取ってすりつぶし、梅の実と一緒に飲めるようにしたら良いんじゃないか、と作ったのがあらごし梅酒です。

今まで梅酒といえば液体でしたが、その中に粗くこした梅の実が入ることで非常にインパクトがあり、ヒットしました。梅の次はゆず、桃と作っていく中で日本酒と果実をブレンドして高め合うことが私たちの得意なところだよねと、そこを伸ばしていったのが開発ストーリーになります。

日本酒仕込みで果実感を最大限に引き出しているのが私たちの商品の特徴でもあり、それを突き詰めた1つの形が大人の果肉の沼という商品です。

大人の果肉の沼の売り方について教えてください。

売上としてはあらごしシリーズが断然多いのですが、それぞれ販路が違います。梅乃宿の場合は、主にB to B、だったので飲食店へは酒販店を経由してという形でしたが、もっとB to C側を強化しようということになったのが2022年7月です。

弊社の蔵を古いところから新しいところへ移転するタイミングでE C事業も強化しようと始まっています。さらに、今までB to Bでやってきたあらごしと同じものを作っていてもE C事業として成立は難しいだろうということで、E C限定の商品を作りました。E Cで体験できることを大事にしたく、大人の果肉の沼の開発が始まりました。

弊社にはあらごしというブランドがあるので、その良さを継承しつつ、形や見せ方を変えることでパーソナルなお客さまが飲みやすい量を提供することができ、価値を感じてもらえるようなボトルを作りました。

また、なぜ沼という名前になったかというと、弊社のB to Cの事業コンセプトの中に、#ワクワクの蔵というものがあります。#の意味合いは、このSNS時代において、SNSを使うお客さまにきちんと浸透していくようにという想いが込められています。

その時に、SNS上でみんなが話題にしてもらえるような名前が必要だろうということで、商品にハマるとか沼るとかいう言葉にヒントを得て、大人の果肉の沼という名前でデザインやコピーを作りました。デザインについては、一緒に取り組んでいる広告会社のデザイナーがデザインしたものになります。

海外のイチゴと日本のイチゴをブレンドしていますが、その理由について教えてください。

いちごは何種類か試していて、その結果、チリ産カマロッサと国産あまおうに落ち着いています。味や食感だけでなく色も重視しており、鮮明な赤色が出るのがチリ産のカマロッサでした。実際に組み合わせた結果、この2つが相性良かったですね。

日本のイチゴは中が白く、それをつぶすと色がピンクになって薄くなります。弊社が作る商品には着色料が入っていません。着色料を入れずにあのキレイな赤い色を出すには、チリ産カマロッサが一番適していました。

昨年は、沼を買いたくても買えない人が多かったようですが、今年はいかがですか。

以前は作ることができる量が少なく、買いたくても買えないタイミングがありました。720mlのあらごしシリーズであれば、1時間に何千本と詰めることができますが、沼は固形物が多いため、1本詰めるのに30秒から1分程度かかります。

1回の製造で100本も作れませんでした。最初はそういう感じだったのですが、お客さまからもっと欲しいという声を受けて試行錯誤し、徐々に機械化できる部分を増やして今は生産量が上がっています。たまに品切れする時はどうしてもありますが、今は概ね安定していると思います。

沼は、どのような人、シーンを想定して作られましたか。

ターゲットは従来のあらごしより、もう少し若い2,30代の女性を狙っています。その理由として、これからの若い世代に新しい酒文化を広げていきたいという思いもありますし、SNSをうまく利用してくれる世代ということもあります。

飲み方としては、どんなシーンでも自由に楽しんでいただけるように、飲む、食べる、かける、楽しみ方超自由というコンセプトを掲げています。食べてもいいし、割って飲んでもいいし、ローストビーフにかけてもらってもいい、そういう作りになっています。

アイスクリームにかけてお召し上がりになるお客さまもいますね。商品の楽しみ方については、ECサイトにも掲載しています。

沼のマーケティングについて教えてください。

日本酒の業界からすると、すごく最先端のことをやっているように見えますが、伝統を守ること、新しいことにチャレンジすること、どちらも大事だと考えています。そういう意味では、他の蔵と同じことをしても面白くない、いかに他と違うことにチャレンジしてワクワクできるのかを会社としては常に目指しています。

その形を追い求めていく中で、今までは一般的な日本酒と同じような流通網にリキュールを売ってきましたが、それ以外の形を模索する中で新しいマーケット、新しい見せ方への挑戦を会社全体として進めているところです。

おそらく、従来のやり方だと日本酒のヘビーユーザーにしか届きません。国内のマーケットを考えると、日本酒のマーケットはどんどん縮小しているので、その人たちだけに情報が伝わったところで、日本酒のマーケットは広がっていかないですよね。

弊社は、新しいお客さまに入ってもらいたいという思いもあり、新しくお酒を楽しんでもらえる層に向けても情報を発信しています。そうなってくると、必然的にSNSを活用しないといけないですよね。

また、大手のように多額の広告費を使うような企業規模ではないので、そこは知恵の勝負だと思っています。広告費を使わず、うまくお客さまに情報が伝わり理解されることをやりたいと考えており、SNSなどを使いながら試行錯誤しています。

弊社のメインテーマは#ワクワクの蔵ですが、その中で大事にしているバリューとして遊び心があります。いつも同じことをやっていてもワクワクするわけはなくて、新しいチャレンジをして、驚きと感動があってワクワクすると思っています。

そのためにも、いろいろと新しいことチャレンジしようと取り組んでいます。

先月はポーションタイプのリキュールを発売しました。キャンプ場などにビンを持っていくのは重いし、割れるし、処分に困りますが、これなら気軽に持っていきやすいですよね。なにこれ!みたいな驚きを作りたいですし、そういうことを考えるのが楽しいので、あまり日本酒っぽくない酒蔵だろうと思っています。

最後にメッセージをお願いします。

いちごが大好きなみなさんに注目していただいたことは嬉しいですし、味も評価いただいてとても嬉しいです。いちごのプロの方々に喜んでいただくことは、自信につながりますね。

あるファミリーレストランが大好きで、そこのいちごみるくの食感が上手だなと開発メンバーに飲みに行ってもらったことがあります。沼も食感を楽しむことができる商品なので、ぜひ、沼を牛乳で割って美味しい、いちごみるくを飲んで欲しいですね。

最後に

いちご大学をやっていてよかったなと思えるのは、このような魅力的な商品やサービスに出会った時に突撃取材できることです。今回もなるほどなあーというトリビア満載の取材となりました。

実をいうと「沼」をすでに手に入れており、いちご大学のメンバーが集まる時にじっくりと楽しみたいと思います。

お忙しい中、取材に応じて頂いた吉田さん、古澤さんにこの場をお借りして御礼申し上げます。

<関連サイト>

梅乃宿オンラインショップ

梅乃宿オフィシャルサイト

大人の果肉の沼「いちご」

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