【いちご研究所】とは?栃木県農業試験場インタビュー!
今回はなんと、栃木県農業試験場いちご研究所にお伺いして、インタビューする機会をいただきました。
栃木県のいちごというと、“とちおとめ”があまりにも有名ですが、こちらの研究所は、その栽培技術の向上や新品種の開発に加え、生産・流通・消費動向の調査分析など、平成20年に開設された「いちご」の総合的な研究開発拠点です。
お話ししていただいたのは、栃木県農業試験場いちご研究所企画調査担当の特別研究員の岩崎さんと主任の関口さんです。
それでは、貴重なお話が満載のインタビュー、どうぞご覧ください。
- いちご研究所が設立されて10年ということですが、この10年の仕事はどんな思いや理念で働かれてきたのか教えてください。
- とちおとめが美味しいのは、それだけノウハウが共有されているからだと農家さんに教えていただきました。それは本当なのでしょうか?
- 栃木県のいちごの品種開発について教えてください。
- 例えば、葉酸が多いいちごを作れるものなのでしょうか?
- 各県の試験場では一生懸命、品種開発が行われていますが、これは県ごとに競い合っているということなのでしょうか?
- 栃木がいちごの生産高1位の理由を教えてください。
- こちらには、どのような取材や電話での問い合わせがあるのですか?
- 栃木のいちごマーケティング戦略として、重要視していることは何でしょうか?
- いちごの保存は流通の中で重要なポイントだと思いますが、いちごが傷まないようにする工夫は進化しているのでしょうか?
- 今後、いちご研究所として力を入れていきたい部分を教えてください。
- 栃木県のいちごについての未来ビジョンを教えてください。
いちご研究所が設立されて10年ということですが、この10年の仕事はどんな思いや理念で働かれてきたのか教えてください。
栃木県は「いちご王国」と言っていますので、いちご生産のさらなる発展を一番に目指して日々、取り組んでいます。
今はまだ農林水産省の統計で平成28年度のデータまでしか出ていませんが、今年の9月頃に正式な統計が発表になれば、栃木県は50年間に渡っていちごの生産量一位となるはずです。いちごは本県を支える重要な品目なので、これからも「いちご王国栃木」を支えていけるような品種が作れればと思っております。
とちおとめが美味しいのは、それだけノウハウが共有されているからだと農家さんに教えていただきました。それは本当なのでしょうか?
どの品種も最大限のポテンシャルを発揮できれば、美味しいのかなと思います。とちおとめは、かなり長いこと栽培・研究されていますので、ノウハウが共有されて一定の水準となっているのではないでしょうか。
栃木県のいちごの品種開発について教えてください。
品種開発を野球のホームランに例えると、とちおとめはバックスクリーン直撃のホームランですね。ラッキーゾーンに入ったり、ギリギリスタンドに入ったりするくらいでも新しい品種にできますが、栃木県は、毎年、約1万株の交配をしているのですが、とちおとめがあるので、なかなか新しい品種を世の中に出そうとはならないのが実情です。
とは言え、その中でもある程度のレベルになったものは系統番号を付けて、現地試験などを行っています。ただし、そこまで達したとしても、とちおとめを超えられる部分があるかをふるいにかけ、それぞれの特徴を生かせるような棲み分けを考え、品種登録を行っています。
2014年に品種登録となったスカイベリーについては、大きくて美味しく、病気にも強いですし、主に贈答用の品種として作りました。それくらいのレベルにならないと、品種にはなりません。
また、栃木県には、なつおとめという品種もあるのですが、こちらは主に夏場のケーキ屋さんなどの需要をターゲットとしたいちごです。県内には夏に提供できるいちごがなかったこともあり、この品種ができました。
夏の品種と言いながらも、暑くては収量が少なくなることもありますので、株元にチューブを設置して、そこに水を流して冷やすなどの対策を行うことで、栽培地域は従来の県内でも夏場が比較的冷涼な高冷地に加え、平坦地へも拡大しつつあります。
いちごは冬の作業がメインですが、夏も含めて一年中、作業はあります。そのように忙しい中で、冬のいちごに加え、なつおとめも栽培している農家さんは、いちごを大規模で栽培し、常時、雇用しているような場合が多くなっています。雇用している人の安定的な確保のために、夏いちごを栽培するという動きはあるようですが、そういう規模にならないと年間通してのいちごの栽培は難しいのかもしれません。冬場の収穫・パック詰め作業を一生懸命がんばることを考えると、夏場の時期はメリハリをつけて最低限、次の作に向けて苗の管理やハウスの準備をすると考える農家さんも多いように思います。
なつおとめはケーキ屋さんに直接卸している場合が多いため、目にする機会が少ないのですが、道の駅や観光地などで販売されていることもあるようです。
また、国の研究機関ではトレンドを考慮して、ビタミンC含有量の多い、“おいCベリー”のようにいちごの中に機能成分含有量の多い品種を育成しています。
例えば、葉酸が多いいちごを作れるものなのでしょうか?
作ることはできると思いますが、今度はそれが美味しいかどうかという話になりますね。
単純にいうと、葉酸含有量が高いいちごを探してきて、それと今までの美味しいいちごを掛け合わせれば葉酸含有量が高いものができる可能性が高くなります。
需要などの関係もあり、今のところ、機能性成分含量に着目した品種開発はメインの目標にはしていません。
各県の試験場では一生懸命、品種開発が行われていますが、これは県ごとに競い合っているということなのでしょうか?
ここは、栃木県の農業を振興するための研究機関として、いちごの研究を行っています。
ただ、育成品種の提供や情報交換など、できる限りオープンに連携を取りながら、他県と切磋琢磨しながら取り組んでいます。
栃木がいちごの生産高1位の理由を教えてください。
日照時間が長いなど、気象条件が向いていることに加えて、農家の技術が高く、栃木県のために作った品種だということが大きいのではないかと感じています。
栃木県の冬は晴れ間が続きますのでそれは大きいですね。
ただ、夜間のハウスはかなり冷えますので、その対策としてハウスを二重にし、内張のハウスの上のところに井戸水を流しています。そうすると、暖房を使用しなくても、井戸水がウォーターカーテンとして、ハウス内の温度を保ち、苗が冷えずに暖房費を抑えられるという栽培技術を取り入れています。
また、農協への出荷割合が高く、農家それぞれがまとまっているように思います。出荷時には、収穫のタイミングやパック詰めなどのレベルを揃えるなどの工夫もしています。
今は農家の方々も競争の時代ですので、インターネット販売を取り入れたり、勉強会や研修会を開催したりしていますね。また、農家の方が気軽に相談できる場所も設けられています。
さらに、とちおとめについては栽培のノウハウや一番美味しい作り方が共有されているため、最大限のポテンシャルで脂が乗り切っている状態です。つまり、単に素材だけではなく色々な要素が重なって生産量一位となっているのです。
また、消費量が多い東京から近いので売りやすいということはありますよね。
どう考えても、同じものを作れば、東京から遠い産地から持って行くよりも鮮度やコスト面で有利になりますから。
こちらには、どのような取材や電話での問い合わせがあるのですか?
ここはいちご研究所と銘打っているだけあり、いちごに関するありとあらゆる電話や取材、視察があります。去年だとトータルで1,000人の方がいらっしゃっています。テレビ局の生中継もありましたね。
ホームページは比較的、充実している方だと思いますので、「いちご 研究」と検索すると上位に表示されるようです。そうするとテレビ局のデータ確認から一般の人までいちごに関するあらゆる質問が寄せられます。
栃木のいちごマーケティング戦略として、重要視していることは何でしょうか?
生産量一位ということがありますので、農家さんにとっても消費者の方にとっても、そして輸送に関わる方にとっても喜んでもらえるいちごを目指しています。
いちごは高いと言わずに、みんなに食べてもらいたいですね。
栃木県には農家さんもたくさんいますし、近くに大きな市場もありますので、まさに「いちご王国」だと思っています。日本全国で最もいちごを生産しているということで、ブランド戦略なども行っています。
今、市場には大玉系のいちごが多いイメージがありますよね。ただ、単純に大きければいいというものでもなく、粒がある程度揃っていて美味しいものが重宝されます。
大きいものを高く売り抜こうといういちごが増えてきていますので、反対にとちおとめもなければ困るよねという話も出るようで、とちおとめの需要が増えているということは耳にしますね。
また、栃木県でも白いいちご作りに取り組んでいます。現在は、品種登録を出願した段階で苗を増やしているところで、マーケティングなどもまだ行っていません。名前も先日、公募が終わり選考作業を進めているところです。
酸味が少なく、甘さが際立ち、まろやかな食感が特徴のいちごで、出回っている白いいちごの品種と比較してみても、見劣りはしないと思っています。
これを単独で売ることはないと思いますが、観光農園やとちおとめとセットにして贈答用のアクセントとして販売することはあるかもしれません。
いちごの保存は流通の中で重要なポイントだと思いますが、いちごが傷まないようにする工夫は進化しているのでしょうか?
普通、いちごは単純に甘くて美味しければいいというイメージがありますよね。でも、そうではなく、重要なポイントは輸送性です。そのため、品種の選抜では、とちおとめよりも硬いかどうかという点は重視されます。
パックに高機能な緩衝材を詰めて輸送できればベストですが、そうするとコストの関係で手に入らない価格になってしまいますよね。ただ、海外輸送や富裕層に売るときにはそのようなパッケージングも想定されます。
主流としては、今までと同じパック詰めをしても傷まないということ。あまりパッケージングに頼らずに、硬いいちごを作るということは重要視されています。
栃木県には、“とちひめ”という品種がありますが、一般には流通していません。なぜかというと、大きくて美味しいのですが、柔らかいのです。美味しいのにもったいないよねということで、観光いちご園の摘み取り用のプレミア感のある幻のいちごとして作られています。
今後、いちご研究所として力を入れていきたい部分を教えてください。
品種開発は、永遠の命題ですね。
例えば、経営分析や新技術の開発というのは、野球に例えるとヒットだったりバントだったりするわけですが、品種開発はホームランです。みんな期待しますよね。新しい品種が定着すれば大きく喜んでもらえます。
研究体制を見ても力を入れていることがお分かりいただけるかと思います。
栃木県のいちごについての未来ビジョンを教えてください。
未来ビジョンをいわれると、ちょっと困ります。(笑)
いちごは、栃木県の農業を支える重要な品目です。これからも「いちご王国栃木」を支えていける品種を作っていきたいと思います。
また、遊び心を持ちながらPRも続けていければいいですね。例えば、県庁のエレベーターはいちご柄になっていますし、15階の押しボタンは“いちご”です。
イベントでは、知事が王様の格好をしていますし、色々な思いを込めていちごと向き合っていきたいですね
これからも、農家、消費者、流通販売の方、すべての方を笑顔にできるいちごを目指します。より美味しいいちごが、より身近になるように、所員みんなで研究を頑張ります。
<まとめ>
今回は、まさにいちごのために作られた研究機関、栃木県農業試験場いちご研究所の方々にお話を伺うことができました。
なぜ、栃木県が生産量一位となったのか、また“とちおとめ”がいかに優れたいちごであるかといった部分まで丁寧に教えてくださり、大変勉強になりました。
また、新しい品種が発表された際には、ぜひ訪れてみたいと思います。
お忙しい中、お時間を頂戴した岩崎さん、関口さんに心より感謝申し上げます。
この場を借りて厚く御礼申し上げます。
<参考サイト>
農業試験場いちご研究所
http://www.pref.tochigi.lg.jp/g61/index.html
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