なぜいちごの香りは人の気持ちを高揚させるのか?

いちご雑学

いちごには、ポリフェノールやビタミンだけではありません。いちごを食べる時に漂う甘い芳香があります。この香りを嗅ぐと人間はリラックスし、とても心地よい気分になります。鬱々とした気分やイライラしている状態を鎮め、本来の人間の心を取り戻す手助けをしてくれるのです、今回はいちごの香りに関するその秘密を紹介します。

人間がアロマを嗅ぐと効果が出る理由

様々な、五感がある中でアロマは即効性がありダイレクトに届くことが知られています。アロマの成分は脳の部位の感情や本能を司る部位の「大脳辺縁系」や「視床下部」に到達します。

大脳辺縁系は人間の感情や気分に関わる脳の部位で、アロマを嗅ぐことで、人間の脳のいらいらや緊張している気分をほぐす、気が滅入っている状態の時に逆に興奮させる、やる気を起こさせる力を持っています。

また、視床下部は眠いや起きる、お腹の満腹、空腹に関わる部位で、体温や睡眠含む向上的な働きに作用する部位です。そのため、アロマを嗅いだ瞬間、お腹がすいて食欲が増し、眠気が発生して眠りにつきやすくなります。

美味しい料理中の香りをかいだらお腹が空いたというのも、このようなアロマの脳へのダイレクトな働きが直結しているのです。

知らなかったいちごに含まれている香りの種類

いちごには、様々な香り成分が豊富に含まれており、人の気持ちを高揚させることが研究で判明しました。そもそも、いちごの香りは、いちごの香りの分子が単独成分で存在しているのではなく、いちごの香りは多くの香り成分が含まれており、その種類は100種類以上にあることはわかっています。多いのはエステル化合物と呼ばれる有機物の分子構造を持っています。

代表的な成分名は、酪酸エチル(リンゴの香り)、酪酸メチル(パイナップルの香り)、エチルヘキサン、酢酸ヘキシルといった果物に含まれている代表的な香り成分です。他にも、リナロール(柑橘の香り)やγ-デカラクトン(ココナッツの香り)も香りの成分分析で判明した成分です。

いずれにしても、果物の香り成分の中でもこのような多種多様な香り成分が入っているため、どのようにこれだけ沢山のエステルの香り成分をいちごが作っているのかはまだ未解明の部分も多いとされています。

こうした多くの果実に含まれている香り成分がある中で、ほんの微量ながら含まれているだけで、いちごの代表的な香りとされているのが、フラネオールです。

いちごの香りのメイン成分フラネオールとは?

フラネオールはいちごの代表的な香り成分で、カラメルもしくはキャラメル様な甘い、香りの芳香を放つ成分です。他の食べ物である、パイナップルやソバやトマトにも含まれていますが、いちごに多く含まれていたため、ストロベリーフラノンという別名でも呼ばれています。

ですが、このフラネオール、いちごに含まれている量としてはほんの微量しか入っておりません。ですが、人間が香りを感じることが出来るのは、フラネオールが人間の鼻で感じることができ、実際に体が反応するために必要な成分量の数値が極微量なためです。その値の量は、なんと水1kgの中に、0.00004mg文献によっては0.00001mg~0.000005mgです。

フラネオールはいちごの成熟度で香りの量に変化が出ます。成熟していないいちごと成熟して最も甘みが出る状態のいちごを比較した場合、熟したいちごのほう香りがあるのが大きな特徴です。その量は1kgあたり、50mgまでの量にまで変化します。

いちごの果実の中では、分子として存在している、フラネオールですが、元々は糖分をアミノ酸が加熱によって結合するメイラード反応によってできる香り成分です。

フラネオールは食べ物の香料にも使用されています。食品に加えるとお菓子を中心に香ばしい香りを加え、甘みと安心感を与えるため世界中で使用されています。

いちごの香りを楽しむ食べ方

栄養面では加熱を含む調理をすると壊れてしまうことがあり、生で食べることがおすすめされています。では、いちごの香りのメリットである高揚感を楽しむには、どんな方法があるのでしょうか?

いちごの香りの成分は、いちごの成熟度によって左右されます。特にフラネオールの場合は、成熟すればするほど、香り成分が増えるため熟した状態がおすすめです。また、いちごの香りを果実で楽しむなら、大きいいちごもしくは中粒以上がベストです。これは、いちごの香り成分は食べる時に鼻の鼻腔に成分が入って脳にダイレクトに届きます。そのため、大きないちごのほうが多くの香り成分が鼻に届くため香りを楽しむことが出来るのです。

また加工食品であるジャムはよりいちごの香りを楽しむことができます。その理由は。フラネオール自体が糖分とアミノ酸の反応によってできる香り成分だからです。ジャムは、砂糖を入れて加熱することによって作られる加工食品のため、カラメルの砂糖の香りが元々もいちごの香り成分のフラネオールの香りをより強くする効果があります。

ジャム以外にもいちごを加熱した加工食品を食べる場合は、人の気持を高揚させる効果があります。他にも、いちごを使ったリキュールやシロップも同様の効果があります。

まとめ

いちごの甘く人の高揚させる香りの成分は、単独の分子ではなくて、100種類以上の香り成分が絶妙なバランスで含まれて初めて存在します。加えて、いちごの香り成分には、多くのリンゴやパイナップル等に含まれる香り成分も含まれています。

その中でいちごのあの甘く、ストロベリーフラノンという名前の由来になった、フラネオールと呼ばれる香り成分がその香りの中心となっています。フラネオールは、カラメルやキャラメルの様な甘い香り成分で、極微量含まれているだけでも、その芳香は人間の鼻で感じられる程です。

そして、フラネオールは、食品と糖分とアミノ酸が加熱によって反応で生成される香り成分でもあるため香料としても使用されています。

いちごの香りを楽しむには、生の果実の場合だと成熟している果実が最も高い量のフラネオールを持つことが知られており、一口あたりに多くの香り成分が鼻に届く大きめの果実がおすすめです。加熱する場合は、糖分が加熱でカラメルが生成するのでより、いちごの香りを強くする効果があるので、ジャムやリキュール、シロップでもより楽しむことができます。

<参考>

いちごの加熱加工による 香気変化の解明 | 学会発表・論文|長谷川香料株式会社
東京都中央区。飲料・食品向けおよび家庭用品向けの香料の製造。会社・IR情報、業務紹介。
https://rhythmbread.com/archives/306
The molecular basis of strawberry aroma
You know that summer is here when juicy red strawberries start to appear on the shelves. In Germany, this seasonal fruit has never been more popular: on average...
フラネオール:イチゴの香り | kanitonekoの科学的小ネタ
 ちょっとしたわけがあって、最近、イチゴを材料にして実験をしています。スーパーで買ってきたイチゴを乳鉢の中でひたすらすり潰していくのだけれど、その間、イチ...
イチゴ23品種における果実の香り解析とその再現並びに香りの成り立ちに関する研究
本研究は、まずイチゴ23品種の果実の香りの特徴を明らかにするために、パネリストによる直接鼻で嗅いだ時および咀嚼時のイチゴ果実全体の香りの印象とにおい特性の評価を行なった。次に、それら品種の中から特徴的な香気有する品種7品種を用いて、イチゴ品種に共通して存在し、イチゴの香りのベースとなる香気成分(共通香気成分)と、品種の...

コメント

タイトルとURLをコピーしました