エンジェルストロベリー農園取材記~なぜトヨタのエンジニアがいちご農家になったのか?

今回は、茨城県内土浦市でいちごを栽培されていらっしゃるエンジェルストロベリーの星 博文さんにお話をお伺いすることができました。

鮮度が良い大粒のいちごがとても好評ですが、ここまでくるには、様々な努力やご苦労があったそうです。ちょっと異色な経歴をお持ちの星さんが、美味しいいちごに託した思いとは?

色々とインタビューさせていただいたので、どうぞご覧ください。

なぜ、いちご農家を始めようと思ったのでしょうか?

決して明るく前向きな話ではないのですが、営業時代にたくさんの注文書や車庫証明等の書類の記入があり、体の筋をおかしくしてしまいまして。営業でありながら、字が年々書けなくなってしまっていたのです。

今でも字はきちんと書くことができないのですが、営業で字が書けないというのは致命的です。当時、すでにパソコンで見積書や注文書は作成できるようになっていましたが、やはり、車庫証明など手で書かなくてはいけない文書も数多くありました。そんな中で、もうこれ以上は続けられないという状態になってしまったのが一番のきっかけです。

さらに、当時私はトヨタカローラ茨城という会社に勤めていました。そこは、トヨタのディーラーの中でも、最初で最後の倒産した会社だとされており、倒産後はメーカー出資に切り替わってカローラ南茨城という会社になりました。

社員を大事にし、みんなが継続していけるような土台作りをしてくれていたのですが、もともと10年経過した後は、他に会社を譲るということになっていました。

そして、10年という区切りを迎えて、茨城トヨタへ会社が譲り渡されたわけです。
トヨタカローラの時代は、メンテナンスの担当地域はありながらも、販売地域に制限はありませんでした。

しかし、茨城トヨタになると、販売する地域も限定するという仕組みに切り替わってしまったのです。そのため、それまでに販売した500台を購入されたお客様ともスパッと切り離されてしまいました。

お客様側からしても、私を気に入って買ってくださっていた方もいらっしゃっていましたし、私自身、営業職の前はメカニックを担当していましたので、その技術を生かしてお客様を広げていくといった営業スタイルをとっていました。

お求めいただいた後に、車のトラブルも自分で対応できるというスタイルを確立していたのですが、それがはまらない会社になってしまったというのも、トヨタを辞めた要因の一つですね。

他社への転職などいろいろな選択肢があったかと思いますが、その中でいちご農家を選ばれた理由を教えてください。

まず、字が書けなくても出来る仕事ということを考えましたね。

また、妻が自分たちで食べるお米は、自分たちで作りたいという話を以前からしていまして。特別、妻が農業に関心があるわけではなかったのですが、そういった話題が家庭の中にあったことも関係していると思います。

車の販売をしていた時、お客様の中にも農家の方がいらっしゃいました。
ちょうど、つくば市で何台かお求めいただいたお客様が、東京で不動産業に従事していたのを心機一転、つくばへ来てベビーリーフを作る農家になられていました。

その方にお話を聞きにいったところ、私たちのように新規就農したい人たちが集まる相談会があるということで、以前、東京で行われたパンフレットをくださいました。

パンフレットに目を通していると、住んでいるところから歩いて10分くらいのところに研修制度も備わっているいちご農家さんがあり、相談に行ったのがきっかけですね。

そこでは、どのくらいの期間修行されたのですか?

ちょうど、2年半くらいですね。

研修などを受けずに自分で調べたり、農家さんに聞きに行くなどして始められて成功している方もいらっしゃいます。
実際に、教えていただいても、自分でやるまでは本当にわからないことだらけです。研修では本当に基本的な作業のやり方を覚えるだけで、作物を育てるということはゼロから始めるくらいの感覚でしたね。

異業種からいちご農家を立ち上げられて、色々とご苦労があったのではないでしょうか。

研修中の苦労といえば、金銭的なものが一番ですね。
トヨタにいたときに、妻が子供の教育費として貯めていたものも、一時期、ほとんどなくなりました。就農するタイミングには、自分のポケットにはお札がない状態でしたので、計画性はあまりなかったような気がします。

500円、1パックを販売するにしても経費が4割を占めています。しかも、夫婦二人で朝から夜、頭に電気をつけてまで作業をして、半年間しか収入はありません。そのため、実際に収入を考えたときには、もっと効率よく販売していかなければダメだなと感じています。

いちごを育てる部分に関しては、どのようなご苦労があったのでしょうか。

いちごというのは、売上的にはすごく大きい作物だと思うのですが、それでもみんながやらないのは、非常にややこしい作物だからではないでしょうか。
お客様にもよく説明するのですが、盆栽がハウスの中に1万株あるという感じですね。

いちご農家の方はよく、樹の形について言及するのですが、本当にその通りで、それが実際のいちごの生育や実の品質などに影響します。1万株あるうちの1株1株にまで名前をつけるところもあるくらいで、それだけ樹の形にこだわって作っています。

また、栽培には、かなり細かい作業が必要になりますね。
普通のお客様から見ると有り得ない話だと思うのですが、いちごを避けながら全面をビニールで覆うために、1株1株の間をホッチキスで止めるという作業をしています。それも、1週間くらいずっとしゃがんで、ホッチキスで止め続けるという。

トラクターを使って、一気に植えたり収穫したり出来る作物に比べると、いちごというのは本当に1株を細かく手入れしています。
いちごを親苗から育てて今は収穫期になりますが、同時に次の親苗も育てているので、1作に1年半くらい費やしていますね。そういうところが、他の作物と違うのかもしれません。

私は昔からラジコンを組み立てたり、4,000ピースのジグソーパズルを作るなど細かい手作業が嫌いではないので、こうして、いちごを育てられているような気がします。

農業は百姓とも言われますが、作物を作り、機械の手入れや販売するところまで全部、自分でやらなくては業として成り立ちません。私自身、もともと、メカニックに携わっていたこともありますので、そういった部分は向いていたのかもしれませんね。

いちご農家になって、良かったことは何でしょうか?

トヨタの営業時代は、仕事も休みもお客様優先でした。休みの日でも家族と接する時間がすごく少なかったので、子供が小さかった頃に一緒にいられなかったというのも農業に携わった一つの理由です。家族で経営をしていれば、いつも一緒にいられるだろうと。

でも、子供たちはお母さんが農業の仕事に駆り出されてしまうので、最初、それがわかってもらえませんでしたね。「どうして、いちご農家になったんだ!」と、子供達がいちご農家であることを憎んでいるのではないか、と思えるような時期もありました。

我が家には、中学2年、3年、そして高校1年生と子供が3人おります。
最近は、思春期になって一緒にいてあげる必要があるときなど、会社員と違って、家族に手をかける時間を作り出すことができるというのは良かったと思います。やはり、仕事は家族と豊かな生活をするためにやっていることですので。

いちご作りで、こだわっていることがあれば教えてください。

Facebook上で、この7年間、1日1回はいちごのことを発信していました。それをずっと見てくださっていたのが、青森県でいちご農家さんをなさってらっしゃる先輩農家さんです。

私がいちごの栽培管理について投稿していると、Facebookのコメント欄でいちごの生育や読んだ方がいい本など毎日、青森の先輩からFacebook上で毎日アドバイスをしていただき、手取り足取り教えていただけたことが大きな転機となりました。

普通は、木を大きく作ると、花数がたくさんつくので収穫量が多くなります。その代わりに、大きいいちごが少し出来た後は中くらいのもの、そして、最後には小さい実が出来る期間が長くずっと続いていきます。

しかし、青森の先輩から教えていただいた栽培管理の下では、大きいいちごが収穫できます。しばらくすると、小さいものも少し出来ますが、またすぐに、大きい実が収穫できるようになります。

そのため、“大きいいちご”という看板を下げずに、そのイメージがお客さんにも定着しますよね。収穫量は減りますが、美味しく大きいいちごができます。

1年を通して、季節ごとの作業量はどのくらいでしょうか?

区切りでいくと、5月の収穫が終わって6月がスタートになりますね。

こちらでは不耕起栽培という形で栽培しているので、毎年、畝上げをせずに同じ畝をもう、6作くらい使っています。草刈機でいちごの株を刈り倒し、それを外に出した後は、ビニールで地面を覆うことで熱して菌を殺すという太陽熱消毒を行います。

そして、9月の定植までの間に苗を育てて、畑の準備をし一斉に1万株植えるのです。植えてからは、花が出てきて実がなるまで水やりをしたり、葉っぱを1株から1枚ずつ取って行く作業などをし、実がなったら収穫をしていきます。

妻は家事もあるので畑にいるのは私の3分の2位なのですが、私は平均すると朝、7時くらいから夜10時くらいまで作業をしています。特に、お手伝いの方などは雇わずに、夫婦二人でやっていますね。

いちごは、どのくらい収穫量があるのですか?

いちごだと、1株あたり1,000円分収穫できれば、すごく優秀だと言われます。よくスーパー等で売っている、2段詰めパック2パックくらいでしょうか。

この農園はちょうど1.5反ありますが、1反あたり6トンを目標に収穫量をみながら栽培をしていました。しかし、3年くらい前からやり方を変え、量よりも質を重視するようになっていたので、当時と比べると収穫量は2/3くらいになっていると思います。

こちらのいちごを購入するためには、直売所まで足を運ぶ必要があるのでしょうか?

いちごは、地産地消が一番良いので、最終的にはそれを目標としています。輸送するのにはリスクが高いですしね。
自分で値段をつけて良いものを販売し、ここのいちごでなければというお客様がどんどん増えていけば嬉しいですね。

今作は、他のいちご農家さんの収穫開始が遅れたのと、私を含めいちご全体の収穫量が少ないので、こちらにもたくさんのお客様にお見えいただいています。

うちは直販売なので、当初は1パック650円で販売していたものを、お正月をすぎてから徐々に値段を下げています。もし、来年も同じような状況になったときにはもう少し値段を上げても、売り切れずに一日中買える状態にしてほしいというお客様のニーズがあれば、値段を下げずに販売していきたいと持っています。

 

ネット販売などは考えられていらっしゃるのですか?

いちごの輸送リスクや鮮度、そして完熟で収穫したときの日持ちなどを考えたときに、わざわざ遠くの方に販売するよりも、近隣の方々に喜んでもらえれば良いかなと思っています。

また、こちらからお送りする先には他のいちご農家さんがいらっしゃると思いますので、その地域の美味しいいちご農家さんを紹介するべき作物なのではないかと思っています。

ただし、いつも買っていただいているお客様に、対面で輸送リスクを大げさにお伝えし、それでも送りたいということであれば発送することもあります。

これからのビジョンがあれば、教えてください。

現在、「雅」という品質が良いいちごを詰めたものを販売しています。こちらは包装代も含めて、12粒で2,400円と割高ですが、とても好評です。このような、1粒200円といった少量で良い品物を、茨城であってもそこに行けば購入できるという商品に育てたいですね。

ちなみに、品種はとちおとめだけにこだわって作っています。
とちおとめは栽培技術的にみても、取り組んだことがない、いちご農家さんがいないくらいの作物なので、何か問題があれば色々と教えてもらえます。
また、本当に作りやすい技術も確立していますし、例えば味に関しても「寒い時期の酸味」「暖かくなってからの甘み」等、調節することができますね。

  • まとめ

今回は、茨城県にあるエンジェルストロベリーの星さんにお話をお伺いしました。

インタビューしている最中も、たくさんのお客さんがいらっしゃる大人気のいちご農家さんです。Facebook上で、その時々のいちごの様子を投稿されているので、より安心感を持って購入していただけるのではないでしょうか。

美味しいいちごを食べるために、少し足を伸ばしてみたい。ここには、そんなことを思わせてくれるいちご達がいっぱいです。
ぜひ、一度味わってみてくださいね。

<関連サイト>
エンジェルストロベリー Facebookページ
https://www.facebook.com/angelstrawberry1583/

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