チキンやサラダで彩られたテーブル、大きなクリスマスツリー、特別なプレゼント…。
こんな特別なクリスマスの日の最後に出てくるもの、あるいは多くのプレゼントといろんな人からの「おめでとう!」の言葉に包まれる誕生日の食卓に出てくる特別なものとして、「ショートケーキ」を連想する人は非常に多いのではないでしょうか。
真っ白なクリームに包まれたふわふわのスポンジの上にいちごが乗せられているこのショートケーキは、しばしば「幸福」を表す代名詞としても使われています。
ただこのショートケーキの成り立ちについては、知らない人も多いかと思われます。
ここではこの「ショートケーキの歴史」に焦点を当てて、解説していきます。
実は日本生まれ! ショートケーキは今年100歳になりました
意外と知られていないことなのですが、実は現在のようなかたちのショートケーキの生誕の地は、ここ日本です。
今のショートケーキの海の親となったのは、「藤井林右衛門」という人物です。この名前に聞き覚えがないという人であっても、現在も続く「不二家」の創業者であるといえばその偉大さが分かることでしょう。
日本における洋菓子のパイオニアともなった彼は、1922年に現在のかたちのようなショートケーキをリリースしました。つまりショートケーキは、今年(2022年)で100歳を迎えたのです。
それを追うこと2年後の1924年に、今度は「コロンバン」によってショートケーキが生み出されました。
なおこの時代のショートケーキの土台は、スポンジというよりもカステラに近いものだったと言われています。コロンバンがショートケーキを打ち出した1924年には東京の乳業者によって業務用の生クリームも作り出されたこともまた、ショートケーキが広まることを後押ししました。
ちなみに今でも少し前の世代の本を読むと、「バタークリームで作られたショートケーキ」が描かれています。バタークリームは保存性に優れたクリームであり、濃厚な味わいを持ちます。冷蔵庫の普及率が95パーセントを超えた現在はほとんどすべてのショートケーキが生クリームで作られていますが、少ないながらも、現在でもバタークリームでショートケーキを作っているお店も存在します。
海外との違い~アメリカにおける「ショートケーキ」とは
さて、この日本生まれのショートケーキですが、実はその原型はアメリカにあります。
藤井林右衛門氏はアメリカの洋菓子業界に注目しその文化を日本に持ち込んだ人物として知られていますが、彼の生み出したショートケーキもまたアメリカの洋菓子業界に存在していたものでした。
ただ、アメリカにおけるショートケーキは、日本のそれとはまったく異なります。
アメリカのショートケーキは、スポンジ(やカステラ)ではなく、ビスケット生地を土台にしています。そしてそのビスケット生地の中に生クリームやいちごを挟むことによって作り上げていくというスタイルを取っているわけです。
日本におけるショートケーキは「白く、柔らかく、甘いもの」ですが、アメリカのショートケーキは「茶色(生地の色)で、さくっとしていて、甘いもの」なのです。
藤井林右衛門氏はこのことを熟知したうえで、「日本人に受け入れられる『ショートケーキ』とはどのようなものか?」を考え、現在のかたちのショートケーキを開発したものと思われます。
ちなみに現在は日本でも食の多様性が進んでいるため、この「アメリカ式のショートケーキ」もそこここで食べられるようになっています。
愛らしく甘酸っぱいいちごと、真っ白で滑らかな生クリームと、ふわふわしていて穏やかな甘さを持つスポンジによって作られるショートケーキは、今も昔も幸せの象徴です。
今度のクリスマスや誕生日は、原点に立ち返り、ショートケーキでお祝いしてみてはいかがでしょうか。
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