多くの人が食べるいちごの加工食品の代表はジャムですが、その美味しさには知られる秘密があるってご存知でしょうか?実は、ジャムの美味しさはいちごの風味や味の要因だけではなく、食べたときの食感や香りも大きな関係を持っています。今回は、そんないちごジャムの美味しさの秘密に関して科学的に検証した論文を紹介します。
そもそもいちごジャムが美味しいと感じる理由
人間が加工食品であるジャムを食べて美味しいと感じる要因とはそもそも何なのでしょうか?それは、食べた果実の味だけではなくて、口当たりや食感、糖分のバランスになります。
果実の味では、甘み、酸味、いちごの風味や香りのバランスはもちろん、ジャムに加工して長期保存による劣化要因が無いかも重要です。また食品として人間は視覚要素も大きく作用しており、見た目や色といった部分も関係しているのです。
ジャムに含まれているあの独特のとろみは、果汁に含まれているペクチンと呼ばれる成分が、加熱によって糖分と酸が反応したことで作られます。そして、そのとろみがあって、こそ、ジャムがとても甘く感じる大きな要素になります。その理由は、ペクチンが長時間人間の舌に留まる様になるためです。加えて、砂糖やレモン汁といった酸を加えることで、元々あった果実にはない深い味わいが加わります。そのため、ただ単に果物を食べた場合に比べて強い甘みを感じるようになるのです。
人間の舌は、長時間口に美味しいと感じる成分が残ること、加えて、様々な味が多く一口で味わうことができればできるほど、美味しいと感じます。更に、その味に香りや見た目でも、食欲をそそる要素が加わることで、深い美味しさを感じているのです。
実験の方法と検討
いちごジャムの美味しさを正確に分析するには何が必要なのか?まずは実験におけるこの評価の基準を設定に関してまずは解説します。
・各官能性
・ジャムを食べているときの口腔内環境の差
・ジャムを食べてから飲み込むまでの動作
まずは各官能性の項目です。この研究では、まずジャムの美味しさの要素、人間が味覚として感じる要素を分析しました。人ジャムの甘み、酸味、イチゴ風味といった要素を時間強度曲線法で測定しました。時間強度曲線法とは、人間が食べ物を食べた時における、嚥下までの官能試験で使用される一般的な指標です。
次に、いちごジャムにおける、美味しさの要素であるペクチンの帳を変えた低濃度のモデルジャムを作成して、ペクチンの含有量によって人間が感じる風味や美味しさの違いに関して、力学的指標で測定しました。
このジャムがそもそも持っている官能性と、モデルを作ったジャムに含まれているペクチン含有量との相関関係から、官能性をより強く感じる、粘性の力学的数値を求めました。
その条件があったジャムを食べたときの、人間の舌の動きや温度、唾液の量による風味の感じ方の違いに関して検証するため、人間の嚥下時のレントゲン写真を撮影して舌と喉の動きから、美味しさを感じる知覚メカニズムを検証した。
実際に求めた基準を使用することで、市販のジャムに関しても応用が利くのか、評価を行いました。
この研究の結果と課題点
この研究でわかったことは、いちごジャムで美味しさを感じる大きな要素はペクチンの種類と含有量が大きな美味しさの要素になっていることです。
ジャムに含まれる、ペクチンの量が多ければ多いほど、粘性が増し、滑らかさがなくなり、べとつきやねっとりとした感覚が強くなります。ペクチンの量は多ければ多いというわけではなく、口の中に入れたときの温度と含まれる唾液によって、粘性が本来のジャムに薄まり滑らかさを感じるぐらいの量が一番美味しく感じるという事がわかりました。
ジャムを食べたときの滑らかさ、口溶けは舌を動かした際に、粘性は飲み込む際に感じます。
いちごジャムの元々の美味しさの要素の風味は、糖度が高い商品はいちごの風味は弱い傾向があり、低糖度の商品はいちごの風味が強いことに裏付けがされました。その中で、人間が実際に食して美味しいと感じる官能性に大きな影響を及ぼす科学的指標は、糖度や糖の種類、含まれているジャムの水分量、酸度やクエン酸ということが明快に示されました。
いちごジャムでより美味しいと感じる要素には、ジャムの粘度と含まれている甘味と酸味のバランスに相関関係があることがわかりました。
この研究はどういう風に私達の生活に活かされるのか?
この研究が役立つ点は、近年、日本でも糖質制限の健康志向が叫ばれており、糖質を少ないジャムでより美味しいものを作るには、いちごの風味が強い品種で作るといった商品改良の工夫につながります。一口で、多くの美味しさを感じることができるジャムができれば、満足度も高く間食を減らすことで、ダイエットや美容の面でも大きなメリットがあります。また、食事制限に寄って、糖質の制限がある人でも楽しむことができ、より多くの人にいちごの美味しさを届けることができるのです。
また、ジャムを家で作る際に、レモン汁や糖分のバランスをコントロールして、より美味しいジャムを作る上でも大きなヒントになります。ジャムは煮詰める時間も美味しさの要素という事がわかったので、同じ分量の材料を使用していても、含まれる水分量によってのどごしが異なるので、自分で作る際に好ましい味付けやより美味しさを感じるものを作ることができます。
いちごジャムを食べたときの美味しさに関する科学的指標が明快で無かったため、この基準を利用してより美味しいジャムの作る上での大きな目安となり、主観的ではなく、客観的に美味しさを検証データ化することが可能になったのです。
まとめ
いちごジャムは、ジャムに加工されることによって持っている粘性が美味しさの大きな要素を占めており、ジャム本来、持っている、甘みや酸味、イチゴ風味の感じ方に変化を与えることがこの研究で判明しました。
そのため、いちごや材料が持っている素材の美味しさの要素だけではなく、ジャムに加工する際の水分量やペクチンの量も考慮してジャムの加工製品として作る必要があります。
今までは、人間が食した官能性に関して明快な基準が設けられていなかったため、今後この基準を利用することでより美味しいジャムの開発や作る上での大きな参考になるのです。
参考文献
https://ci.nii.ac.jp/naid/130006035251
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/4/46992/20190206100158988203/k7719_1.pdf
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