手のひらサイズで感動の美味しさ!一流料理人や宮内庁にも選ばれるいちご、「寒熟」の魅力に迫る。

いちご農学部

宮内庁にも選ばれる高級ブランドいちご「寒熟」。

「寒熟」といういちごをご存知でしょうか。三つ星レストランや宮中晩餐会、天皇陛下のお誕生日にも選ばれる、ブランドいちごです。大粒で、1粒2000円。そんないちごが愛知県で作られています。愛知県北部、作手高原にある「ファームトヨヒロ」塚本寿彦さんが作るいちごです。

標高550メートル。平均気温は12.5℃と冷涼な地域です。取材にお伺いした2月は、沿道に雪が残り、きりっとした澄んだ空気。そこに「ファームトヨヒロ」さんのハウスはありました。

中京圏では、海に近い温暖な地域に、いちごのハウスは多くありますが、山の上の冷涼な地域で、どのようにして栽培されているのか、お話をお伺いしてきました。

絶妙な温度管理と水分管理。寒冷地の気候を生かして職人が作るいちご。

朝の収穫作業が終わり、選別と箱詰め作業の時間帯にお邪魔しました。甘い香りに包まれた作業場。大きな手のひらサイズのいちごが並ぶ景色は圧巻です。ひとつぶ60g以上あります。

大きさにも驚きますが、さらに驚くのが艶の良さ。その輝きに見とれるほどの艶やかさです。艶の良さは完熟であることの証。美味しさの証です。そして形も美しい。均一に色づいています。

「はい」と手渡されたいちご、試食させていただきました。

勿論ひと口では食べられませんので、両手で持ってかぶりつきました。広がる香り、溢れる滑らかな果汁、ある三つ星レストランのシェフは芸術品だと話されていましたが納得です。

他にない特別ないちごだと思いました。

生ものを扱う作業場ですから、暖房をきかすわけにはいきません。長時間いると手が悴む寒さです。塚本さんも膝が痛むと仰っていました。寒さに耐えながら、ひと粒ずつチェックされており、大変な作業です。

ハウスにも案内していただきました。ハウス内の温度は17℃。「春先の生き物であるいちごが、心地良いと感じる温度と水分量に調整しています。」とお話される塚本さん。

こまめにチェックして管理していることを説明してくださいました。この寒冷地では、暖房にかかる費用も大変なことです。いちごは熟すまでに一定の熱量が必要ですが、そこに一気に到達してしまっても味がのりません。

じっくり時間をかけて甘味を蓄えていくのが良いのですが、その時間や温度にも限度があります。過熟になっても味や香りが悪くなり、すぐ傷んでしまいます。

塚本さんはその限度ギリギリを狙って温度管理、微妙な水分調整をされています。

1芽に3果としてあとは摘果(花)し、大きく育てます。茎の下をビニール紐で支えるようにして、茎の這わせ方にも配慮しています。果実全体がムラなく均一に育つようにしています。光も均一に当たり、重力も均一にかかります。

「この果実は死んでるでしょ」と、いちごひとつぶの中の、ほんの1つの点の部分を指し示して見せてくださいました。

いちごの種に見える部分が実は果実なのですが、その果実の状態までチェックされています。説明していただかないとパッと見てもわかりません。よく見てもわからないかも。この果実の1つ1つが健康に育つように管理されています。細やかな作業に驚きです。

そしてハウス内に響き渡るモーツァルト。音楽の振動は細胞膜の浸透圧にも働くということで、これもまた水分や栄養の浸透に役立っているとのこと。音楽のジャンルは何がいいかということは、特にエビデンスがないようですが、塚本さんの好みでボンジョビを流していたら、苦情が来たのでやめたそうです。

「寒熟いちご」は、品種は紅ほっぺです。品種の持つポテンシャルを、いかにして最大限に引き出すかが、このいちごの魅力です。試行錯誤され、経験に基づく根拠や感覚で、絶妙且つ緻密な管理をされて、初めてここまでの物が出来上がります。そこまでの管理がされて、美味しく健康に育ついちごは、外観も美しいのだということもわかりました。

職人が作るエリートいちごです。とある料理人のかたは「天才の作るいちご。うちは塚本さんのいちごしか使いたくない。」そう仰っていました。

「うちのいちごはアスリート。最大限に努力して鍛えて、いい状態に持っていきたい。」塚本さんは、子どもを育てる親のように、いちご栽培のお話をしてくださいました。

手に届く、ひとつぶの感動。いちごに込めた思い。

塚本さんの「寒塾いちご」の美味しさを知った人たちからは、毎年注文が殺到し、供給が追いつかない人気です。すぐには買えなかったり、価格が高くなったりしていますが、塚本さんの思いとしては「例えば子どもが、お母さんの誕生日に、お小遣いを貯めてこのひとつぶを買う・・そんな記憶に残る幸せのひとつぶ。

毎日食べるものではないけど、ちょっと特別な日に、手に届く幸せ。そういうものを作りたい。」そうお話してくださいました。「ひとつぶの感動」・・自然とそんな言葉が頭に浮かびました。

箱に書かれた商品のキャッチコピーは、まさに「ひとつぶの感動」。

本当にそんないちごです。

大切なかたへの贈り物に、ご自分へのご褒美に、ぜひ感動体験をしていただきたいです。

文と写真:勝田紀久子
日本野菜ソムリエ協会認定・野菜ソムリエプロ
ベジフルビューティーセルフアドバイザー
メンタルフードマイスター
食育Jr.マイスター
フードツーリズムマイスター
豊橋百儂人プレミアムサポーター
看護師 看護学校教員

医療従事者としての経験と、身内の看病の経験から食の大切さを痛感。食に関する学びを深めたいと考え、野菜ソムリエなどの資格を取得。

看護専門学校にて看護師教育に携わる傍ら、食と美容健康に関するコラムの執筆やレシピ提案、農産物紹介、ワークショップ講師、マルシェイベントの企画・運営などの活動を行っている。趣味は生産地訪問とカメラ。

いちご大学アカデミアでは「いちごと地域振興」の講義を担当。

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